日比生 猛 会員
比生 猛会員は、
フランスに生まれ、10余年をヨーロッパで過ごしました。
父は、1965年にアルテリーベを創業し、初代アルテリーベの大きな一時代を築きあげました。
母は現地でフランス料理を学び、日本に帰国してから料理教室を40年以上続けられました。
私も母の影響を多分に受け、フランスに興味を持ち、ルーアンの大学院を卒業し、その後フランスに住むつもりでいましたが、1998年に新しくなるアルテリーベのリニューアル企画に参画することになり、現地調査のためフランスからウィーンへ行き、そこでウィーンの芸術に触れました。中でもオットーワグナーやその弟子であるジョセフマリア オルブリヒの建築には強い感銘を受け、室内装飾にその様式を取り入れようと思いました。そして現地でウィーン工房と出会い、ウィーンの職人を横浜に招き、ベーゼンドルファーのピアノからシャンデリア、寄木の床に至るまで全てヨーロッパから奇跡的に作り上げることができました。
料理に関しては、母の影響もあり、小さい頃からかなり身近にフランス料理がありました。幼少の頃にパリに住み、夏には南仏のムージャンにバカンスでフランス人の家でお世話になり、現地の食生活にふれたことは、今でも記憶に残っていて、私の料理の原点になっていると思います。
アルテリーベのお料理で大切にしていることは、父の代から続くレストランの歴史と背景を大切にしながら、今のアルテリーベにふさわしい料理を作り上げることです。コースを主体としているのでフランス料理のスタイルですが、その中にドイツ、オーストリア、ハンガリーといった要素も組み込んでいます。
食材に関しては、日本各地の生産者との結びつきを大切にしています。四季の味わいを感じられるよう様々な産地から厳選された生産者こだわりの食材を産地から直接取り寄せております。季節に彩られた日本の食材と世界の食材に想いを馳せ、生産者の想いを伝えるべく心込めて調理し、丁寧な盛り付けを心掛けています。
音楽に関しては、私がヨーロッパやアメリカに滞在したときに、ピアノを師事して頂いたルーマニア人のホリア・ミハイル氏や現地での人脈や出会いを通じて、東欧を中心に豪華客船などで経験豊かな音楽家を専属で招聘しております。
アルテリーベは室内装飾から、料理、音楽家にまでオリジナリティ溢れるレストランで、きっとご満足いただけると思っております。横浜にお出かけの際は、ぜひアルテリーベにお立ち寄りください。 皆様のお越しをスタッフ一同お待ち申し上げております。
THE HISTORY OF ALTE LIEBE – SINCE 1965
1965年当時日本大通には諸外国の領事館が並び、異国情緒溢れる横浜らしい街並がありました。その地にアルテリーベは生演奏のあるミュージックレストランとして誕生し、一時代を築きました。その後1996年の夏に旧商工奨励館の修復保全工事のため、惜しまれながらも31年の幕をいったん閉じ、2000年には、修復保全された優雅な横浜屈指の歴史的建物内に移り、内装は建物竣工当時のウィーンの芸術様式で統一し、建物内外の調和を図り、アルテリーベは甦りました。
アルテリーベとは、古きを愛すという意味が込められています。古さには、歴史的な重み、経年とともに味に深みが増していくもの、ノスタルジックな想い出、様々なロマンや愛着感が積み重なってできる良さがあります。半世紀以上に及ぶアルテリーベの歴史は、皆様の様々な思い出が詰まった歴史そのものであります。
THE CONCEPT OF MUSIKRESTAURANT: MUSIK & GASTRONOMIE
ミュージックレストランというスタイルは、豪華客船タイタニック号のメインダイニングや鹿鳴館の晩餐会にも通ずるものがあります。ヨーロッパから招聘したプロの専属音楽家の生演奏という非日常的な要素が、時には主張し、時にはお料理も引き立ててくれます。アルテリーベでは、音楽と料理がバランス良く組み合わさり、相互にその価値を高めるような空間を目指しています。
料理は、歴史と伝統を礎にしながら、移りゆく季節を的確にとらえ、四季の味わいを感じられるよう様々な産地から厳選された食材を取り寄せております。季節に彩られた日本の食材と世界の食材に想いを馳せ、丁寧に料理した一皿一皿を、生演奏とともにゆっくりとお愉しみください。
STARTING POINT OF DESIGN: JUGENDSTIL
装飾の基点は、ベーゼンドルファーの特注のピアノになります。1999年にフランクフルトのピアノ展覧会に出展されたユーゲントシュティル (ドイツのアールヌーヴォー) の正方形の寄木装飾を施されたピアノを中央に置き、そのデザインに統一するべく、店内の腰板や壁にも同様の寄木が刻まれています。また建具や床の寄木は全て今も現存するウィーン工房が来日し制作しました。また、曲げ木で有名なトーネット社に特注で作製したイス、ロブマイヤー製のシャンデリアやテーブルランプは、すべてその芸術様式を表す作品です。禁断の果実をモチーフにしたシャンデリアにイブをそそのかした小さな蛇がいることも小さな遊び心です。そして、四本の円柱には、ウィーンの分離派美術館をモチーフにした黄金の月桂樹の葉が描かれています。
1929年に建立された旧横浜商工奨励館も、当時の西欧の新様式を反映した建築物で、ユーゲントシュティルの中でもクリムトやオットーワグナーといった芸術家の属するゼッセッション、分離派の様式により、建物の内装と外装が見事に調和しております。アルテリーベはこうして奇跡的にも歴史的建造物内に新たな内装とともに生まれ変わりました。